2016.09.27 フード

泡盛って実はヘルシー! 泡盛マイスター直伝の魅力をご紹介

数あるお酒のなかでも、沖縄のお酒といえば泡盛です。居酒屋へ行けばだいたい置いてありますし、スーパーやコンビニでも購入できるなど、とても身近なお酒ですよね。

ただ、「泡盛ってよくわからないかも」という方は意外と多いのではないでしょうか? 確かに泡盛は度数も高いし、人によっては積極的に飲もうとは思わないのかもしれません。しかし、泡盛は意外なことにとてもヘルシー。泡盛には糖分がまったく含まれていない……なんて冗談のような話を聞くと、なんだか気になってきませんか?

今回は、イオンモール沖縄ライカムに勤務する“泡盛マイスター”、仲宗根さん、比嘉さんのお2人から、泡盛の意外な話をいろいろと聞くことができました。ぜひチェックしてみてください!

全酒造所の泡盛が揃う、イオンモール沖縄ライカムの泡盛コーナー

沖縄県内であればどこへ行っても入手できる泡盛ですが、特に圧倒的な品揃えを誇っているのがイオンモール沖縄ライカム内にある“AEON LIQUOR(イオンリカー)”。なんと、県内にある46酒造所すべての泡盛を扱っています。ここを訪れたら、泡盛コーナーはすぐに見つけることができますよ。
イオンリカー正面
正面から見えるのは、ほとんどが泡盛

AEON LIQUORに勤めているのが、今回取材を快諾してくださった仲宗根佑希さんと比嘉裕子さんです。お2人は泡盛マイスターの資格を持っており、豊富な知識やテイスティングのスキルをフル活用し、訪れたお客様へ泡盛の魅力を伝えています。
泡盛マイスターのお2人
取材を受けていただいた泡盛マイスターのお2人。左が仲宗根さん、右が比嘉さん

泡盛マイスターとは、泡盛マイスター協会が認定している資格のこと。泡盛についての知識はもちろん、テイスティングやサービスのスキルについても高いレベルが求められている、“泡盛のプロ”です。
そんなお2人に話を聞いてみると、泡盛には意外な魅力がいろいろとあることがわかりました。

どうして糖質ゼロに? 泡盛がヘルシーなお酒になるまで

冒頭に紹介した「泡盛は糖質ゼロ」というのは、冗談のようで本当の話! でも、にわかには信じられない話ですよね。では、意外にヘルシーなお酒である泡盛がどうやって出来上がっていくのか、順を追って解説していきます。
たくさんの泡盛
多くの種類がある泡盛。どれも糖質は含まれていない

泡盛の原料となるのは、細長い形が特徴のタイ米。日本のお米を使わないのは、タイ米のほうが泡盛の製法によく合っているからです。

まずはタイ米を洗い、蒸しあげてから冷まします。一度蒸すことで、次の工程でブドウ糖がよく作られるようになるのです。
次に登場するのが、泡盛をつくるのに欠かせない“麹菌(きくきん)”。麹菌をお米に散布することで、お米に含まれるデンプンがブドウ糖へ変化します。

ここで豆知識!
お酒に含まれるアルコールは、原料に含まれるブドウ糖と酵母が反応することによって作られます。ただ、すべての原料にブドウ糖が含まれているわけではないので、そのような原料を扱う場合は麹菌を使ってブドウ糖をつくる必要があるのです。果実にはブドウ糖が含まれているので、たとえばブドウを原料とするワインは麹菌を必要としません。反対に、お米や麦、イモなどの穀物にはブドウ糖ではなくデンプンが含まれているので、泡盛やビールなどをつくる際には麹菌が必要になります。

泡盛には、“黒麹(くろこうじ)”と呼ばれるタイプが使われます。そのお酒が泡盛と名乗れる条件にはいろいろありますが、そのひとつが「黒麹を使っていること」です。仲宗根さんによると、黒麹がデンプンをブドウ糖へ変える際にはクエン酸も大量につくり、そのクエン酸が保存の役割を果たしてくれるとのこと。暑い気候の沖縄では、つくっている途中でお酒が腐ってしまう心配があるため、黒麹のつくってくれるクエン酸が欠かせないのです。
泡盛マイスターの男性
丁寧に説明してくれる仲宗根さん

そして、次に酵母を加え、アルコール発酵をさせていきます。ここで初めて、原料がアルコールに変化。そうしてアルコール度数が18度前後になったものを、“もろみ”といいます。

どろりとしたもろみをろ過することでできるのが、日本酒やビールなどの“醸造酒(じょうぞうしゅ)”。ここからさらに“蒸留(じょうりゅう)”という過程を経てつくられるのが“蒸留酒”です。泡盛は蒸留酒なので、蒸留が行われるのですが、この工程が糖質ゼロのヒミツ!

蒸留を簡単に説明すると、液体を熱して蒸発させたあとにその蒸気を集め、冷やして再び液体に戻すことです。
ここで重要なのが、沸点の差。水の沸点が100℃というのは、よく知られているとおりですね。一方、アルコールの沸点は水より低いので、水とアルコールが混ざった状態のもろみを熱すると、先にアルコールのほうが蒸発します。そのため、集めて冷やしたお酒はアルコールの度数が高い状態になります。

このとき、水のなかに置き去りにされるのが糖質! 糖質は蒸発することがないので、泡盛には含まれないのです。これが、糖質ゼロの仕組みなんですね。
ちなみに、ここで蒸発せずに残るのは糖質だけではなく、黒麹が生み出すクエン酸なども含まれます。お話を聞いている間、「クエン酸がつくられるのなら泡盛の味にも影響するのかな?」と少し思っていたのですが、そうではないようですね。確かに、泡盛は別に酸っぱくはありません。
古酒が勢揃い
出来上がった泡盛は、時間をかけて寝かせることで美味しくなる

これにて泡盛は出来上がりですが、泡盛の特徴を語るには、このあとも重要。泡盛には、ほかのお酒にはあまり見られない「熟成させる(寝かせる)」という工程があります。

泡盛は長い時間保存しておくと、熟成が進み、コクが深まってまろやかな味になっていきます。そのため、同じメーカー、同じ製法の泡盛だったとしても、つくられてすぐの“新酒”と3年以上寝かせた“古酒(クース)”では味が段違い。手頃な値段で泡盛の風味を楽しめる新酒も魅力ですが、泡盛の本当のうまみを味わうなら、古酒がおすすめです。

そんなわけで、糖質を気にせずに飲むことができる泡盛ですが、その種類は把握しきれないほどに豊富。「どれから飲んでみればいいのかわからない」となってしまうかもしれませんが、そこは心配ありません!
泡盛マイスターの女性
お客様に合う泡盛をおすすめできるよう、泡盛マイスターの資格を取ったという比嘉さん

AEON LIQUORへ行けば、泡盛マイスターである仲宗根さんや比嘉さんがいらっしゃいます。その方が普段どのようなお酒を飲むのか、どれくらいの度数が好みなのか、泡盛は口にしたことがあるかなどさまざまなことを伺い、そのうえでお客様にピッタリの一品をおすすめするのが泡盛マイスターのお仕事。泡盛選びには、とても頼りになる存在です。

さらには、AEON LIQUORには泡盛の試飲コーナーがあります。
泡盛試飲コーナー
県内46酒造所の泡盛すべてを試飲することができる

その場で実際に飲んでみながら選べるので、きっと自分の口に合う泡盛が見つかるはず! 泡盛に興味を持った方は、ぜひ自分好みの銘柄を探してみてください。

一度は滅びかけた? 泡盛の辿ってきた歴史

仲宗根さん・比嘉さんからは、泡盛の歴史についてもお話を聞くことができました。すると、実は泡盛は一度滅びかけたことがある……というなかなか衝撃的な話が。
まずは、泡盛の誕生から現在までの流れを、簡単にまとめてみます。
泡盛の陳列棚
今では当たり前のように飲まれる泡盛は、一度滅びかけて復活したもの

泡盛がいつから作られていたのかは定かではありませんが、文献を読み解いた結果、約600年前には泡盛が作られて薩摩藩(現在の鹿児島県)と取り引きされていたと推定されています。つまり、それ以前には泡盛作りが始まっていたと考えられるわけですね。

そのルーツを辿ってみると、泡盛の原形となるものはタイから伝わったのではないか、というのが有力な説です。また、当時琉球と交流のあった中国の福建省に泡盛と非常に似たお酒があり、これがルーツなのではないかという説も。現在最も有力とされているのは、どちらも正解で、両方の技術をもとに泡盛が出来上がったという説です。

泡盛は長い間、琉球王朝で親しまれてきましたが、沖縄県各地に壊滅的なダメージを与えた沖縄戦にて一度は滅びかけてしまいます。泡盛をつくっていた県内の酒造所が、すべて破壊されてしまったのです。その結果、泡盛をつくるのに必要不可欠な黒麹が失われてしまいました。

しかし、泡盛の工場跡を訪れたある職人が、戦前の泡盛づくりで使われていた道具を掘り起こしました。そこにこびりついていた黒麹菌が奇跡的に生きており、増殖させることに成功したのです。
その後、戦後すぐは国が管理していた酒造りが民間に移行することで、多くの酒造所が誕生。再び泡盛が民衆のためにつくられるようになり、現在に至るというわけです。

一度は滅びかけたのに、職人たちの努力によって復活を遂げただなんて、なんだかドラマチックですよね。

ぜひ泡盛をお試しあれ

最後に、今回貴重なお話を聞かせていただいた仲宗根さん・比嘉さんから、それぞれおすすめの泡盛を紹介していただきました!
おすすめの泡盛
お2人とも、古酒を挙げられていた

仲宗根さん(右)のおすすめは、崎山酒造廠の3年熟成古酒「松藤」。比嘉さん(左)のおすすめは、石川酒造場の5年古酒「甕仕込(かめじこみ)」です。

ちなみに、来る11月1日は「泡盛の日」。ぜひ、この機会にお好みの泡盛を探してみてください。

この記事をシェアする